秋の風にゆられて、可憐な花を咲かせるコスモス。
暑かった夏がおわり、涼しい秋の訪れを感じさせる、日本の風景になじむ花ですよね。
秋桜と書いてコスモスと読む・・いまでは当たり前のように文字変換されますが、秋桜は本来、コスモスという読み方ではありませんでした。
コスモスをあらわす漢字が「秋桜」と定着したのには、どのような背景があるのでしょうか。
日本の秋に似合うコスモスの花
ピンクや白の花を咲かせる可愛らしいコスモス。
やさしい秋空のもと、風にゆれる一面のコスモス畑はとても美しい光景ですよね。
日本の秋の風景になじむコスモスはメキシコ原産。
在来種と思いきや、外来の植物なんですね。
キク科コスモス属の一年草で、夏のおわりから晩秋まで花を咲かせてくれる秋の花。
和名は、秋桜と大春車菊(オオハルシャギク)です。
大春車菊という和名は、明治20年ごろ、松村任三博士が命名したと言われていますがはあまり知られておらず、コスモスの和名といえば、秋桜となっています。
秋桜の読み方はあきざくら?
この和名としての秋桜の読み方はあきざくら。
秋桜(あきざくら)は、コスモスの開花期である秋に、桜に似た花弁をもつピンクの花を咲かせることから名づけられたと言われています。
実際に桜の花びらに似ているかどうかはさておきまして・・、私たちが普段「秋桜」という字を読むときは、コスモスと読むことが多いですよね。
漢字も、パソコンやスマホなどで文字変換すると、ふつうに「秋桜」とでてきます。
コスモスを漢字で秋桜と書くようになり、秋桜をコスモスと読むのが定着したのには、なにか理由があるのでしょうか。そして、いつのことなのでしょうか。
コスモスを漢字で秋桜と書く由来は?
和名では、本来「あきざくら」と読む秋桜。
いまでは、コスモスと読むのが当たり前のようになっていますが、実は、この読み方をするようになったのはわりと最近。昭和50年ごろのことです。
山口百恵さんの秋桜がはじまり?
当時何があったのか、何か由来があるのでしょうか。
それは、まっさんことさだまさしさんが作詞作曲した、秋桜(コスモス)がはじまり。
昭和歌謡の名曲のひとつである「秋桜」は、1977年10月にリリースされた、山口百恵さんの19枚目のシングル。嫁ぐ女性の心境や状況、母への想いを歌った、もの悲しくしっとりとしたバラード曲ですね。
この曲が世にでる前は、コスモスのことを和名の「あきざくら」と呼ぶのが一般的でしたが、曲のタイトルや、歌詞のなかでも秋桜を「コスモス」と読ませて歌ったことで、コスモスという読み方が世の中に広まっていったのです。
薄紅の秋桜が秋の日の
何気ない日溜まりに揺れている
此頃涙脆くなった母が
庭先で一つ咳をするこんな小春日和の穏やかな日は
あなたの優しさが浸みて来る
明日嫁ぐ私に苦労はしても
笑い話に時が変えるよ
心配いらないと笑った秋桜 / 詩・さだまさし
…今日も一日お疲れさまでした🙇 pic.twitter.com/DucNsGiO7q
— taro (@crazytaro432) October 19, 2018
山口百恵さんの曲が大ヒットしたことにより、定着していった秋桜の新しい読み方。
秋桜を「コスモス」と読ませたのは、たとえば演歌にでてきそうな「運命」と書いて「さだめ」というのと同じですね。1980年代前半には、若者言葉の「マジ」が広まり、それに対して「本気」という漢字が使われるようになったという例もあります。
ただ、さだまさしさんがこの曲につけたタイトルは、歌詞にもでてくる「小春日和」でした。
しかし、曲を聴いたプロデューサーの酒井政利さんの提案で、「秋桜」にタイトルが変更となったという話が残っています。
秋桜のタイトルも、さださんは当初「あきざくら」と読ませるつもりだったのだとか。
もしこのまま発売されていたら、コスモスという読み方が広まることはなく、いまでもあきざくらと呼んでいたかもしれませんね。
コスモスの語源は何?
さて。コスモスはメキシコ原産の外来種。
日本への渡来については諸説ありますが、一説には、1879年(明治12年)にイタリアから日本に赴任した美術学校の教師ラグザーによって、コスモスの種が持ちこまれたと言われています。一方で、幕末にはすでに伝わっていたという説も。
その後、明治末期には全国的に広まったのだそう。
コスモスは、こぼれ種でも生育するほど栽培しやすい植物で、道端や草むらでも風にゆられながら力いっぱい咲いていますよね。
美しいだけでなく、風で倒れても立ち上がり、育ち続ける生命力の強さがあるコスモスですが、そんなコスモスの語源は何からきているのでしょうか。
コスモスの学名は Cosmos bipinnatus。
コスモス ビピンナタスといいます。
そして、属名のCosmosは、ギリシア語のKosmos(コスモス)が語源となっています。
これは宇宙をあらわすコスモスと同じで、意味は、秩序のある世界、宇宙、調和、美しさ。
カオス(混沌)の対義語としても使われます。
コスモスと名づけた人は、満点の星のように美しく咲くこの花を見て、まるで無限に広がる宇宙のようだと感じたのかもしれませんね。
実際に、コスモス中心には小さな星がたくさん!
実は、この黄色い部分も花なんですよ。
この部分は、筒状花(つつじょうか)といいます。
筒状花をよく見てみると、星型に開いた花弁のなかから、黒い雄しべが見えていますよね。
それから、ピンク色の8枚の花びらは、舌状花(ぜつじょうか)といいます。コスモスの花はこのように、筒状花と舌状花の2種類の花から構成されています。
コスモスは、小さな星が集まる宇宙のように、たくさんの花の集まりでできているのですね。
おわりに
コスモスの和名である秋桜の読み方は、あきざくら。
秋桜を「コスモス」と読むようになったのは、昭和の歌謡曲、山口百恵さんの「秋桜」が1977年に大ヒットしたから。それ以降、この読み方が広く一般的になっていったようです。
この秋桜という漢字。日本語のなかでも特に好きな漢字だったのですが、まさか当て読み?だったとは・・ちょっぴり驚きです。
時代の流れのなかで新たに生まれ、変わっていく日本語っておもしろいものですね。
さだまさしさんが最初につけていたタイトル、秋の終わりのあたたかい日よりをあらわす「小春日和」も素敵な言葉です。
これから寒い冬がやってきますが、おだやかな小春日和には、コスモスを見におでかけしてみませんか? そして、花びらのなかの小さな宇宙にもぜひ注目してみてください。