キラキラと灯りがまたたくクリスマスツリー。
クリスマスシーズンが訪れるとあちらこちらで見られ、なんだか幸せな気分になりますよね。
クリスマスツリーといえばモミの木ですが、その起源はいつのことなのでしょうか。
また、クリスマスツリーを飾るようになった由来や、ツリーに飾られるオーナメントひとつひとつにこめられた意味もご紹介します。
クリスマスツリーの起源は8世紀
クリスマスシーズンにかかせないクリスマスツリー。
クリスマスツリーの起源となった木が登場するのはいつごろのことなのでしょうか。
その起源は、8世紀までさかのぼります。
当時、ドイツの深い森に住むゲルマン民族は、北欧神話に登場するトール神を信仰し、トールの化身として巨木のオーク(ナラの木)を崇拝していました。
そこにあらわれたのが、イングランドからやって来たキリスト教の宣教師、聖ボニファティウス(Bonifatius / 672-754)です。
聖ボニファティウス(672頃-754)
イングランド出身の宣教師で聖人。俗名はウィンフリート。当時は異教だったオランダやドイツ中央部へ宣教活動を行い、これらの地域がキリスト教世界へ組み込まれるのに大きな功績があった。ゆえに「ゲルマン人の使徒」と呼ばれる。最後は伝道中に異教徒に襲撃され殉教。 pic.twitter.com/SAEgoLmBjF— 中卒アスペニート (@mmmnvivi) December 14, 2017
キリスト教を広めたい聖ボニファティウスは、民衆の前で、雷神トールに「この木が聖なるものであるならば、雷を落としてみよ」と呼びかけました。そして、聖ボニファティウスがオークを切りはじめたとき、突然大風が吹いて、その巨木はなぎ倒されたのです。
ゲルマンの人々は、トール神の雷が落ちなかったのを見て、聖ボニファティウスの言葉に耳を傾けるようになり、やがてキリスト教へと改宗。聖ボニファティウスは、倒れたオークの木材で教会を建てたのでした。
切り倒されたオークのそばからモミの木が生え、聖ボニファティウスはこの木を奇跡の木として、キリスト教の布教に用いていきます。
教会のなかにもそのモミの木を飾り、ゲルマンの人々が新しく信仰するキリスト教のシンボルに。これがクリスマスツリーの起源になったといわれています。
トール神のオークの巨木があったドイツのヘッセン州北部フリッツラー(Fritzlar)には、現在、フリッツラー司教座聖堂が建てられ、聖堂前には、聖ボニファティウスの銅像が建てられているそうです。
クリスマスツリーを飾る由来は?
こうしてキリスト教のシンボルとなったモミの木。
実際にクリスマスにツリーを飾るようになったのはいつごろのことなのでしょうか。
モミの木がクリスマスツリーとして飾られるようになった由来は諸説ありますが、一説には1419年、ドイツのフライブルクでパン職人の信心会が聖霊救貧院にツリーを飾ったのが、クリスマスにクリスマスツリーを飾った最初ではないかといわれています。
一方で、1510年に、宗教改革で有名なドイツのマルティン・ルター(Martin Luther / 1483-1546)がモミの木にあかりを灯したのが最初、という説も。
クリスマスイブの礼拝の帰りに、常緑樹の枝のあいまに見えた美しい星空に心をうたれたルターは、家に持ち帰った小さなモミの木に、星の光をイメージしてロウソクのあかりを灯したのだとか。これが、現代のクリスマスツリーのイルミネーションのはじまりといわれています。
モミノキにキャンドルを灯し、クリスマスツリーならではのイルミネーションの原型を作ったのは宗教改革で名高いマルティン・ルターであったとする説がある。ルターはモミノキの向こうに星が瞬いていたことからこれを着想したという。#考花学 pic.twitter.com/cmvoUc63vj
— 川崎 景介 (@kawasakikeisuke) December 15, 2015
ただ、これもひとつの説であり、ルターもキリスト教を布教するために、このロマンチックな話とクリスマスツリーをうまく利用したのかもしれませんね。
さて。それから数百年、クリスマスツリーを飾る風習はドイツのなかで広まっていきました。
その後、1746年にはドイツ移民によってアメリカへ。イギリスへは1840年、ヴィクトリア女王がドイツ出身の夫のためにクリスマスツリーを飾ったことがきっかけとなり、1860年代には一般にも広く浸透していきました。
また日本では、江戸時代末期の1860年、プロイセン王国(現在のドイツ北部辺り)のオイレンブルク伯爵が、滞在先の公館でクリスマスツリーを飾ったのが最初だと言われています。
クリスマスツリーの飾りの意味
世界に広まっていったモミの木のクリスマスツリー。
常緑樹であるモミの木には、冬の寒さに負けない強さと生命力があり、永遠の命の象徴とされていました。そして、時代とともに華やかにデコレーションされていくクリスマスツリー。
ツリーに飾られたトップスターやベル、ヒイラギ、キャンディケインなどのオーナメント。この飾りひとつひとつにも、大切な意味がこめられているんですよ。
トップスター
クリスマスツリーのてっぺんに輝いている大きな星。
この星の飾りはトップスターと呼ばれ、キリストが生まれたときに東の空に輝いたベツレヘムの星を表しています。東方の三博士にキリストの誕生を知らせ、ベツレヘムに導いたとされる希望の星ですね。
このように宗教的な意味のあるトップスター。
日本でもこのデザインのツリーが多く見られますが、イギリスではツリーのトップには、クリスマス・エンジェルと呼ばれる天使が飾られます。
ベル
キリストが生まれたことを知らせる喜びのベル。
その役目をもっていた天使のベルを表しています。
ベルは、羊飼いにたとえられるキリストが、迷える子羊たちを導くために使うものでもあり、ベル自体にも日本の鈴のような魔除けの意味があります。
また、プレゼントを届けてくれるサンタクロースの姿をひとめ見ようと、サンタクロースが通ったときに音がなるようにベルを飾ったという話もあります。
ヒイラギ
ケーキの飾りにも使われるヒイラギの葉と赤い実。
棘のように尖ったヒイラギの飾りは、キリストがかぶらされたいばらの冠を象徴しています。
緑の葉は永遠の命を、赤い実はキリストが流した血を表しているといわれています。
また、ベルと同じように、ヒイラギには魔除けの力があるとされ、日本でも古くから邪気を払う木として鬼門の方向に植えたり、縁起のよい庭木として親しまれてきました。
キャンディケイン
杖の形をしたキャンディの飾り、キャンディケイン。
これは、羊飼いが使う杖を表しています。
キャンディケインには、羊飼いが羊を導くように、キリストがを人々を導いてくれるという祈りがこめられています。また、硬いキャンディにも意味があり、キリストの固い信条や信仰心の固さも表しています。
さらに、羊飼いの杖は、群れからはぐれそうになった羊を戻すために使われていたことから、杖には人々の助け合いの心の意味もこめられています。
このキャンディケイン、最初はキリストの清らかさを表す白一色のキャンディでした。
のちに赤いストライプが入り、赤の線はキリストがローマの兵士に鞭打たれたときの傷と、十字架で流した血を表し、緑の線には永遠の生命という意味がこめられたといわれています。
りんご・オーナメントボール
アダムとイブが食べたといわれる禁断の果実。
りんごは、その知恵の木の実を象徴したものです。
生きる喜びと永遠の命をもたらすりんごの実は、クリスマスツリーの伝統的なオーナメント。
ドイツでりんごが不作だった年、代わりとして赤いガラス玉を飾ったのをきっかけに、時代とともに光沢のあるメッキやガラス製のオーナメントボールが使われるようになりました。
いまでは、いろんな色のボールがありますが、クリスマスカラーにも意味があるんですよ。
白・・・純潔、純粋な心、雪
緑・・・永遠の命、神の永遠の愛
金・・・キリストの気高さ、ベツレヘムの星
靴下
靴下もツリーに飾る定番のモチーフですよね。
これは、サンタクロースのモデルとされる聖ニコラウスの逸話が由来となっています。
貧しい三姉妹の話をたままた耳にした聖ニコラウスは、その夜、煙突(or 窓)から金貨を投げ入れたところ、暖炉のそばにあった靴下のなかに偶然入ったのだそう。助けてくれたのがニコラウスだとわかり、お礼を言い感謝する両親に、このことは誰にも言わないようにと立ち去っていった、というお話です。
このことから、クリスマスに靴下を飾る習慣が生まれ、サンタクロースが煙突から入ってきて、贈りものを入れてくれるといわれるようになったのだとか。
リース
輪っかになった華やかなクリスマスリース。
その途切れることのない円の形は、永遠を表します。
そして、リースに使われる常緑樹も永遠を表す色。
玄関にも飾られるクリスマスリースは、神の永遠の愛を象徴したオーナメントなのですね。
ヒイラギで作られたリースには魔除けの意味も。
また、リースに飾られたリボンにも、永遠の絆で結ばれますようにという願いがこめられていますし、飾りのまつぼっくりは豊かな実りの象徴とされ、豊作の願いがこめられています。
キャンドル
世を照らす光を表しているキャンドル。
キリスト自身も世を照らす光であり、キャンドルはキリストを象徴している光です。
子どものころ、自宅で飾りつけていたクリスマスツリーのオーナメントにも、モールで作られたキャンドルがあったのをよく覚えています。
クリスマスツリーの由来でもお話ししましたが、ドイツのマルティン・ルターが、空に輝く星の光をイメージしてモミの木にロウソクを灯したのが、ツリーにキャンドルを飾ったはじまりといわれています。
現代では、火事の危険性があったり飾りつけに手間がかかることから、安全で使いやすいイルミネーションライトで代用するようになりました。
クリスマスツリーにまたたく美しい星の光。
そして、モチーフのひとつひとつには、こんなにも深い意味がこめられているのですね。
いままで何気なく飾りつけしていたけれど、モチーフとなった由来を知ると、クリスマスデコレーションをより楽しむことができそうですね。
おわりに
モミの木がシンボルとなったのは8世紀のドイツ。
そして、実際にクリスマスにツリーを飾るようになったのは15~16世紀のことでした。
日本では、宗教的な意味はなく飾られるクリスマスツリーですが、オーナメントひとつひとつに意味がこめられているというのはとても興味深いですね。
永遠の命をあらわすクリスマスツリーに、幸せを祈りながら大切に飾りつけられてきたオーナメント。今年のクリスマスは、その意味を思い浮かべながら、思い思いの飾りつけを楽しんでみてはいかがでしょうか。