紫陽花の漢字の由来は?あじさいの名前の語源と紫陽花の当て字の背景

漢字で、紫の陽(ひなた)の花と書くあじさい。
とても美しい日本語ですが、なぜあじさいにこの漢字が当てられたのでしょうか。
また、あじさいという花の名前になった語源は?
気になる紫陽花の由来について調べてみました。

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紫陽花の名前の由来は?

紫陽花は、なぜあじさいという名前がついたのか。
この花名には、どんな意味があるのでしょうか。

古くから、あぢさゐと呼ばれていた紫陽花。
万葉集には、紫陽花の歌が二首あり、このころから紫陽花の花があったことがわかります。
(のちほど二首の歌をご紹介しますね)

あじさいの名前の語源は諸説あります。

あじ(あづ)は、集めるの古文単語の集(あつ)むからきていて、小さいものが集まっているさまを表します。さいは、真っ青を意味する真藍(さあい)が変化したものです。

つまり、小さな藍色のものが集まって咲いた花という意味のあづさあいが変化してあじさいとなったとされています。

紫陽花の漢字の由来は?

それでは、あじさいに紫陽花という漢字を当てたのにはどんな由来があるのでしょうか。

あじさいの漢字が紫陽花になったのは、平安時代。

平安中期の承平年間(931年~938年)、歌人であり学者でもあった源順(みなもとのしたごう)が編纂した和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)という辞書のような書物のなかで、紫陽花を紹介したのが最初だとされています。

源順は、唐の白居易(白楽天)の漢詩に出てくる紫陽花を、日本のあじさいと同じ花だと思って、あじさいに紫陽花という漢字を当てたのですが、実はこれは勘違いで・・。実際には日本のあじさいとは違う花だったそうなのです。
 

白居易の詩に出てくる花は、紫色のよい香りの花だったらしく、白居易はライラック(リラ)を見て紫陽花と名づけたのではないかと言われています。現在の中国語では、あじさいのことは綉球花または八仙花と書くそうです。

あじさいが紫陽花という漢字になった由来は、源順の勘違いによって当てられた漢字が、そのまま日本で定着してしまった、ということなんですね。

万葉集に出てくる紫陽花の歌

雨の季節の風物詩でもある紫陽花。
古典和歌ではあまり人気がなかったようで、万葉集には二首だけ登場します。

そのなかでは、紫陽花は味狭藍安治佐為という漢字で書かれています。

こと問はぬ 木すら味狭藍 もろとらが 練りのむらとに あざむかえけり
(大伴家持)

安治佐為の 八重咲くごとく やしろにをいませ 我が背子見つつ偲はむ
(橘諸兄)

大伴家持(おおとものやかもち)は、令和の典拠となった万葉集の梅花の歌を詠んだ大伴旅人(おおとものたびと)の長男ですね。

 
橘諸兄(たちばなのもろえ)の歌では、紫陽花をめでたい花として取り上げていますが、大伴家持の歌では、色が変わりやすく実を結ばない紫陽花は、人を欺く不誠実な人のたとえとして使われています。

現在でも、移り気・浮気・無常といったイメージのよくない花言葉がついている紫陽花ですが、いまでは、母の日の贈り物として定番になりつつある人気の花です。

日本原産の紫陽花には、ヨーロッパで品種改良された西洋アジサイなどさまざまな種類がありますが、万葉集に出てくる紫陽花は、日本に自生する原種のガクアジサイとされています。

紫陽花の別名は?

紫陽花は、土によって花の色が変わりますよね。

また、土壌とは関係なく、紫陽花は咲き始めから咲き終わりまでのあいだ色を変えていくことから、紫陽花には七変化という別名があります(七変化という品種の紫陽花もあります)

ほかにも、こんなに多くの別名があるんですよ。

紫陽花の別名
七変化(しちへんげ)
八仙花(はっせんか)
四片(よひら)
手毬花(てまりばな)
またぶりぐさ
オタクサ

七変化と八仙花は、紫陽花の多彩な色の変化から。
八仙花は、中国語の紫陽花でもあります。

四片は、紫陽花の花弁が4枚あることから。
平安時代に編纂された古今和歌六帖などの和歌集に、よひらという言葉が登場します。

手毬花は、紫陽花のまるく集まった姿から。
手まりのように、花序が球形に咲く紫陽花をてまり咲きと呼びます。

またぶりぐさは、室町時代の古典文学作品「言塵集」(ごんじんしゅう)に登場します。昔、紫陽花の大きな葉をトイレの紙の代用として使用していた地域もあったのだとか。

オタクサは、日本に滞在していたドイツ人のシーボルト医師が、恋仲だった楠本滝(お滝さん)の名前をとって、紫陽花の学名をハイドランジア・オタクサと名づけようとしたことが由来となっています。

おわりに

あじさいは、あづさあいが変化した言葉。
また、紫陽花という漢字が当てられた由来は、なんと勘違いからだったんですね。

 
アメリカアジサイの白いアナベルが大好きな私ですが、万葉集のころから日本に馴染みのある、日本原産のガクアジサイの美しさに改めて心惹かれています。

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